2011年09月07日
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感想・映画「卒業」【ネタバレ注意】

Written By: トーノZERO連絡先

「というわけで、卒業を見てきた」

「古い映画だろ」

「午前10時の映画祭だ」

「どうして?」

「ネタとして使われた事例は見た回数が多いのに、オリジナルの映画を見たことが無いので気持ちが悪かったので、いつか見たかった」

「なるほど」

発端 §

「というわけで、9月になっていつもの映画館が戻って来たはずだ」

「それで?」

「今はどんな映画をやってるのかな、まだ夏休み映画を細々と上映しているだけかな。と思って府中の上映リストを見て驚いた。卒業って書いてある」

「わはははは」

「というわけで、即刻卒業を見に行くことを決定」

感想 §

「それで感想はどうだい?」

「すげえ、鼻持ちならないエリート男が主人公。しかも、自分の未来が決められないとほざく贅沢野郎」

「じゃあ、映画は感情移入できない?」

「そうでもない。年増女にコロッといいように操縦されて転落人生一直線」

「年上の女性に性の手ほどきを受けるパターンが欧米では人気だっていうね」

「母親並の年増だ。旦那がいて不倫になる」

「ぎゃふん」

「しかも、途中から娘に乗り換えちゃう。世間知らずのお子様だから」

「ひでえ奴だ」

「まだまだ。そんなものじゃない」

「えっ?」

「主人公、大学院にも行かず就職もせず、プー太郎のままストーカーになる。娘の大学の近くに住んでしまう」

「なんてひどい奴だ」

「しかも、最後に既に終わった不倫がばれる。娘は他の男と結婚させられる」

「その結婚式に娘を奪って逃げるわけだね。有名なシーンだ」

「そうだ。痛快だ。車のガソリンが切れて自分の足で走って式場に到着。その後は、高いガラス窓から娘の名前を叫んで、その後は十字架を振り回して乱闘だ。娘も協力して一緒に戦って一緒に逃げる」

「いい結末か」

「そうじゃない。実は2人で逃げ出してバスに乗るのだが、不安そうに娘が主人公を見ても、主人公は前を見たままで娘の不安を和らげようともしない。既にここで心がすれ違っているんだ」

「つまりどういうこと?」

「主人公はとことんダメな勘違い野郎で、しかも狂っているジコチューということだ」

「ええっ!?」

「だからさ。彼は娘を連れて逃げられればそれで良かったんだ。娘は彼の所有物であり、持ち逃げが成功した事件でハッピーエンドなんだ。でも娘からすれば、これからが大変なんだよ。こんな奴だとは思ってなかったが、もう戻れない。何しろ両親の前で戦って逃げ出しちゃったのだからね」

「つまりどういうこと?」

構造的に言えば §

「だからさ。この映画はエリートの転落を描いているわけだ。それと、もう1つの裏テーマが女が親子2代でダメ男に引っかかって人生を狂わせてしまうという話なのだ」

「えー」

「でも、女側は不幸のタネを自分で蒔いているんだよ」

「ひでえなあ」

「そうだ。ひでえ話さ」

「じゃあ、ダメ映画ってこと?」

「そうじゃない。ひでえ話の方がワクワクするだろ?」

「ぎゃふん」

もっと構造的に言えば §

「実はこの映画は構造的にいびつなんだ」

「どうして?」

「BOY MEETS GRILSでスタートしない。最後に駆け落ちする娘はなんと中盤まで出てこない。最初は年増女がヒロインなのだ」

「まさか。それじゃ映画にならないじゃん」

「そうじゃない。実は、主人公から見た女は、母と娘で本質的に差が無いんだ。親子だからどこか似ている。しかし、単に若い方がいいし、独身の方が気楽に付き合えるという意味で、娘の方を選んでいるに過ぎない」

「娘が人間扱いされてねえ!」

「そうだ。だからこそ、結末のバスに乗ったときの主人公の表情に意味がある。彼は連れ出してバスに乗った時点で話が全て終わっているんだ。今更に娘を見て不安を取り除く必要もない。だって、娘を独立した人間扱いしてないからだ」

「娘が不幸」

「そうとも言えない。娘も、デートしていてもハンバーガーとかポテトをむしゃむしゃ食べ続けて緊張感があまりない。隙は大きいよ」

その他 §

  • ラストで主人公と娘が乗った黄色いバスが小さな川を渡る (さりげなく橋の上を通る)
  • 終わった後の客が暗い。そりゃそうだ。こんな映画だし。でも、意外と大きなスクリーンでやっているので、客の入りはいいようだ
  • 穴を2つ開けて飲む缶入り飲料。今はプルタブで1つ開けるのが多いが、昔は穴を2つ開けていた。1つは空気抜き